2026/08/23 11:48

(この記事は2025年12月にnoteで公開されたものです)
自主制作の出版物「ZINE(ジン)」の制作を始めた芸術家のHANA。なぜ今、ZINEなのか?制作に至るまでの想いと作品の構想を語った。

ZINEは小さな声を届けるためのメディア
ーまず始めに、ZINE(ジン)とは何ですか?
HANA:ZINEの語源は「Magazine(雑誌)」です。一般的に雑誌は出版社が発行するもので、プロの編集者やカメラマンを集めて制作されますが、ZINEは個人から発行された冊子を指します。個人と言っても、クリエイターが複数人いる場合もあります。
あくまでも個人的な出版物なのでコンテンツの自由度が高く、普通の雑誌にはあまり載っていないようなコラージュアートや、詩を載せてもいい。手書きの文字で作られたものも多いです。
とはいえ出版物ですから、やはり時代ごとのカルチャーやその背景にある社会の姿を映し出したものが多いと感じます。使われる表現の手法が言語であれ非言語であれ、ZINEは一時代をリアルに生きる人たちの小さな声、つまりは個人の言論を届けるためのメディアなのです。
ーZINEとの出会いは?
HANA:数年前、独立系書店巡りにハマっていた時期に荻窪の本屋 Titleさんで初めてZINEに出逢いました。当時アートやカルチャーに興味はあったものの、雑誌やSNS以外でよりディープで濃い情報にアクセスする方法がわからなかったんです。
どこかに面白いメディアはないか……と半ば途方に暮れつつ本屋さんを巡っていたので、TitleさんでZINEがずらりと面陳された棚に出逢ったとき、「これは!!」と感動しました。その時はZINEという名前すら知らなかったんですが(笑)。

▲2019年ごろ都内で買い集めたZINEたち
それからは下北沢の本屋B&Bさんや神楽坂のかもめブックスさんなど、様々な独立系書店でZINEを買い漁りました。当時興味があった書店経営や製本など出版関係のZINEが多いですが、『ODD ZINE』のようにカルチャー色の強いものもあります。というか、あの書影は衝撃的すぎて買わざるを得なかったですね(笑)。

アーティストとしての人生哲学を言語と非言語の両輪で伝えたい
ー今回、ZINEを作ろうと思ったきっかけは?
HANA:ZINEに限らず、自分が関わらせてもらっているコミュニティで自主制作の出版物を作っている人が多いので、周りに触発されたというのが大きいですね。
その前から、20代の今の自分の脳内を何かしらの形にして残しておきたいな、という思いもずっとありました。
26歳の時に絵を描き始めてから2年以上が経つのですが、その間に会社員からアーティストへの転身、アフリカ生活、ノマドへの転向など様々な出来事があり、その中でたくさんの方と出会いました。
多様な価値観やバックグラウンドを持つ方々と語り合う中で思考体力が鍛えられ、自分なりの人生哲学のようなものが出来上がってきて。2027年に30歳を迎えるので、タイミングも良いし20代の集大成をまとめておきたいと思ったんです。

▲参考にさせていただいている野中モモさんの著書
ーZINEという形を選んだのはなぜですか?
昔から文章を書くことが好きなので、次に本を作るなら詩集か文字が多めのZINEがいいなと考えていました。
2025年に「アーティスト1年目の作品アーカイブ」をコンセプトに自主制作のアートブックを作ったのですが、これは絵画と写真がメインのビジュアルブックに仕上がっています。
2作目はnoteをベースにしたエッセイのような文字物に全振りしてもよかったのですが、やはり自分の肩書きは芸術家なので、哲学を伝えるなら言語と非言語の両輪でやりたい。それならZINEが最も適していると思ったんです。
また、実はペインティングに手を出す前はコラージュアートをやっていた時期もあったので、コラージュが頻繁に使われているZINEに憧れていたというのもあります。そう考えると、ZINEは自分の制作活動の原点とも言える存在ですね。
SNSのデジタルアーカイブを紙媒体へ。アイロニカルな行為から化学反応が生まれる
ー具体的にはどのようなコンテンツになるでしょうか。
友人と語り合ったあとに「これはいいな」と思った内容を紙のノートにまとめる習慣があるのですが、この「まとめ」がコンテンツとして成立するよう密度高く編集していけたらと思っています。
テーマとして考えているのは、愛、幸福、そして人生。重いテーマのようですが、友人たちと日常的に語り合っています。
そして、そこに自分が持つアートとことばの力でどう切り込んで行くか。メディアとしての自由度が高いので、この切り込みの角度と深さでどんな形にでも変容できそうなのがZINEの面白いところですね。
今回は書き下ろしのコンテンツに加えて、過去のnote記事やInstagramの投稿、さらに300ページくらい溜まっているアイデアノートのアーカイブから厳選して素材として活用していく予定です。
とにかく見返す資料の分量が膨大すぎて、今のところ自分でも全貌が見えていません(笑)。

▲アイデアノートの束。厚さは5cmに届こうとしている
ZINEの歴史を調べる中で、「まだ紙媒体が主流だった時代に、ZINEがSNSの役割を担っていた」ということを知りました。
「オールドメディア」なんていう言葉が流行語にノミネートされる昨今ですが、それらが隆盛を極めていた時代にも個人の言論を届けるためのメディアはちゃんと存在していたんです。
ーSNS全盛の時代にそのデジタルアーカイブをオールドメディアである紙媒体に印刷して編集して出版するというのは、ある種アイロニカルな行為にも思えます。
いわゆるハイブリッドとも違った、デジタルとアナログの隔たりを溶かすような試みができたら面白いですね。個人だからできるメディアミックス特有の化学反応を楽しんでいただけたらと思います。

ヒトリンタビューとは、文字通りひとりで行うインタビューである。自己問答の「問」と「答」の役割を分けて可視化することで、思考も整理しながら読者側も読み進めやすい形でアウトプットできるというまさに一石二鳥のコンテンツスタイルと言えよう。

